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最高裁判所第一小法廷 昭和58年(ク)149号 決定

抗告人

阿部富

右代理人

三宅東一

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告は、民事執行法一一条の執行異議申立棄却の決定に対する即時抗告による不服申立の方法を認めていない同法一〇条一項、一二条一項は憲法三二条に違反する、と主張する。しかし、憲法三二条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利があることを規定するにすぎないのであつて、審級制度をどのように定めるかは、憲法八一条の規定するところを除いては専ら立法政策の問題であると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一八八号同二三年七月七日大法廷判決・刑集二巻三号八〇一頁、昭和二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日大法廷判決・刑集四巻二号八八頁、、昭和三五年(テ)第一三号同三六年一一月一七日第二小法廷判決・民集一五巻一〇号二五〇二頁)。そうすると、執行異議申立棄却の決定に対し即時抗告による不服申立の方法を認めていない右法の規定が憲法三二条に違反するかどうかの問題を生じない。右論旨は、採用することができない。その余の論旨は、単なる法令違背を主張するものにすぎず、民訴法四一九条ノ二所定の場合にあたらない。

よつて、本件抗告を棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(和田誠一 藤﨑萬里 中村治朗 谷口正孝)

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